2016年9月29日木曜日

ミシェル・ブラジー展

銀座のメゾンエルメスフォーラムで開催中の「リビングルームⅡ/ミシェル・ブラジー」展へ。

Michel Blazyは初めて知るアーティストだったが、植物や昆虫など、生命あるものが見せる変化の結果や過程に作品にしているとのこと。そういう意味で「リビングルーム」というタイトルも、変化し続ける空間に言及したものらしい。


ネスプレッソマシーンも、ブラジ―にかかるとこうなる。これ、見るとすごく自然で、どこの家のキッチンにあってもおかしくなさそうな気がした(使えないけど)。

エルメスのフォーラムで写真撮影がOKな展示は珍しい。すりガラスの壁面から優しい自然光が入り、天井が高く開放感があるレンツォ・ピアノのガラスの建物は、いつもアートの展示と一体になって、より美しい空間を作っているので、撮りたいと思う人は多いはず。


これは「ホウキモロコシ」とのことで、実際にほうきに種を植えて栽培中。並んだ鉢の間を歩くと、都会の温室にいる気分。11月27日までの会期中、また成長を見に行くのも楽しいかもしれない。

2016年9月16日金曜日

La Mamouniaのアート散策

今回マラケシュで滞在したLa Mamounia(ラ・マムーニア)は、1923年創業の歴史あるホテル。伝統的なモロッコ建築と装飾が美しい。

La Mamouniaはモロッコアートの展示にも力を入れており、館内を散策しながら、優雅な装飾とともにアートも鑑賞できる。

まずチェックしたいのは「マジョレル・ギャラリー」。夜は生演奏もあるラウンジスペース。


ホテルの人に聞いて知ったのだが、あのマジョレル庭園を作ったジャック・マジョレルは、ラ・マムーニアの最初のインテリアデザイナーだったとのこと。そういうわけで、ここにはマジョレルが描いた天井画がある。

別のスペースにはモロッコの伝統衣装のイラストの展示も。




企画展示も常に行われており、各客室フロアの廊下に人物、風景、植物など様々なモロッコの写真が並んでいた。

モノクロームの写真は先に訪れたメゾン・ド・ラ・フォトグラフィを思わせるが、ホテル内に展示されたのは昔撮られたものではなく、現代の作品。フロアごとにひとりのフォトグラファーの作品が展示されている。

ロビーエリアにはモロッコの風土を描いた絵画が多く、中にはこんなコンテンポラリーな作品もさりげなく飾られている。




庭園も見逃せない。

モロッコにはこんな真っ赤なサボテンが!と一瞬思ってしまったが、遊び心あるスカルプチャーが植え込みにまぎれていたのだった。

美術館並みに楽しめるホテル。限られた滞在の時間をより充実させてくれた。







2016年9月14日水曜日

マラケシュ メゾン・ド・ラ・フォトグラフィ

マラケシュの旧市街メディナにある「Maison de la Photographie」は、昔のモロッコをテーマにした写真美術館。19世紀終わりから20世紀半ばまでのモロッコの風景やポートレート写真を展示している。

フランス人が撮影したものが多かったと記憶しているが、有名な写真家による地元の人のポートレートも、無名の旅人が街角の日常を捉えた写真も、どれもが当時のモロッコの様子を伝える貴重な資料。吹き抜けの3階建ての小さな建物にも、モロッコらしい様式と装飾が見て取れる。


ポートレートの人物の意志のある目にハッとしたり、セピア色の風景写真に不思議な懐かしさを覚えたり。

モロッコの歴史や文化を知るための博物館はあまたあれど、メゾン・ド・ラ・フォトグラフィの写真たちは感覚に訴えてきて、近世のモロッコの姿が印象に残る。

カフェがあるルーフトップからは旧市街を一望できる。絶景ではないけれど、違う視点から街を見られるスポットとしても覚えておきたい。



2016年9月13日火曜日

イヴ・サンローランのジャルダン・マジョレル


初めて訪れたモロッコ。今回はマラケシュで開催される「Pure」という旅行のトレードショーに参加するのがひとつの目的。

マラケシュに到着寸前の飛行機から見下ろした赤い砂丘に、砂漠の国のイメージが膨らむ。


そしてマラケシュのメナラ空港の、未来のオアシスを思わせる幻想的な美しさ。長いフライトの疲れを忘れた一瞬。



今回の私のマラケシュ訪問のもうひとつの(というより、実は最大の)目的は、Jardin Majorelle(マジョレル庭園)へ行くこと。イヴ・サンローランの庭園としての知名度が高いここは、もともとジャック・マジョレルというフランス人の画家が半生を費やし、世界中の旅先から様々な植物を持ち帰って作り上げた庭園。彼が作らせた建物の鮮やかなブルーは、「マジョレル・ブルー」と呼ばれ、庭園を更にエキゾチックな場所にしている。

サンローランとパートナーのピエール・ベルジェは、旅行で訪れたこの場所を「マティスが使った色が自然と融合した空間」と呼んで惚れ込み、取り壊されそうになっていたのを阻止して自分たちで買い取ってしまったほどだった。

色彩やフォルムに対し人並み外れた感性を持っていたはずのサンローランがそこまで愛した庭園がどんなものだったのか、とても興味があった。

庭園内は竹林に始まり、シダやサボテンやヤシなど様々な異国の植物が生い茂り、乾いた空気と澄んだ青空の下、熱帯雨林とは異なるワイルドさを醸し出す。


テラコッタ色が混ざったピンクに彩られたマラケシュ市街にはない、強い色のコントラストは、確かにマティスの絵を思わせ、異国の中にある異国ともいえる独特の世界。サンローランがこの庭園に出会った1966年は、原色と直線で構成された「モンドリアン・ルック」を発表した1年後。惹かれる要素があったことも想像できる。

敷地内の「Love Gallery」には、サンローランが毎年「Love」をモチーフに作成した新年のグリーティングカードが飾られている。面白いことに切り絵の手法などはマティスそっくり。


ジャルダン・マジョレルは普段は各国からのツアー客も多く、入場待ちの行列もできる。

訪れた日はちょうどイスラム教のEid al-Adhaという大きな祝日に当たり、町中のほとんどの店やビジネス、観光地も休み。街は静かで、タクシーも流していない。でもジャルダン・マジョレルに問い合わせたら、通常より1時間遅い9時から開園とのこと。これはむしろ絶好の機会。ホテルで車を手配してもらい朝一番で出かけた。案の定、上品なフランス人のツアーグループ一組がいただけで、すいている庭園を落ち着いて散策できた。

2017年秋にはここにイヴ・サンローラン美術館もオープンする予定。

イヴ・サンローランの記念碑が奥にある